「宝塔」第288号
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 忘れられた子育て

 少年の非行や犯罪が問題となっています。家庭内暴力、いじめ、虐待(ぎゃくたい)、万引き、少女売春等々、その誘因(ゆういん)について、環境悪があげられています。テレビ、映画、漫画雑誌などが悪どい暴力や、残忍性、或いは性的好奇心などを露骨に表現して、少年たちに刺激的な悪影響を与えています。
 また、政治家や官僚、大学や医院など公共関係の人達の不正は、社会に対する不信感を起こさせます。大人社会の毒気が抵抗力の弱い子供たちの精神に悪性の病原菌をばらまいていると言えましょう。
 これらの環境悪、社会的病原菌から子供を護るのは父母の責任であります。家庭は子供の教育の場です。それを忘れて、子供の健康な心の成長を歪(ゆが)めている家庭が少なくないようです。
 「子のことを放ったらかしにしている」「甘やかしている」「うるさく干渉する」この三つは、子育ての態度としては落第です。最悪なのは親のエゴイズム、心の貧しさであります。
 
 ○他人に対して(特に不幸な人に)思いやりのない親
 ○酒や女や賭け事などに熱中している父親
 ○いつも夫の不平や悪口を言っている母親
 ○夫婦喧嘩のたえない家庭
 ○仕事に熱心で子供をかまってやらない親
 
 こういう親は、子にとっては当てにならない親であり自分を理解してくれない親となります。この親に対する不信感によって、子は孤独感に悩まされます。そして、正常な心は歪められ、何事も悪く受け取るような暗い心になります。子にとって一番の恐怖は、親に愛されない見放されるということです。
 「おまえなんか捨ててしまうぞ」「どこかへ行ってしまえ」「おいていくぞ」等々
 これらは親の言ってはならない禁句です。
 父母の喧嘩、或いは離婚は、子供の心を不安にします。不安感に悩む子は、心の制御を失って衝動的になりやすく、また行為も無責任になりがちです。物の道理や前後を考えることなく行動したり、何かに失望すると捨て鉢になったり、嘘や盗みという心の病気も起きます。アメリカで非行少年増加の原因の一つに親の離婚があげられています。

アメリカ的な自我主張の悲劇

 アメリカのある家庭のことです。両親とも高校教師で母は娘の時に児童教育学を専攻し、博士になるつもりで結婚の意志はなかった。大学に在学中、現在の主人と恋愛関係になり、あやまって妊娠したため、やむを得ず結婚しました。お腹の子は彼女にとって邪魔者、愛情の無い出産であった。生後二ヵ月、夫の母に子を任せて、仕事と勉強に専念しました。
 その子が知恵の発達が遅れているので、精神薄弱ではないかと思い、病院で検査を受けたところ、薄弱どころか知能指数は人並み以上。原因は母の愛情不足、世話不足がその成長を妨げていたのであった。
 十四歳の時、祖母が死に、唯一の愛情の通う相手を失った少年は、悲しみと孤独の淵に沈んだ。母に対する欲求不満が昂(こう)じ、精神の安定を失って、ついに家出をしてしまった。行方を探し回ったところ、林の中の大木の上に寝ぐらを造って住んでいた。精神分裂症を起こしていたのです。

 日本的な自我主張の悲劇

 十数年前、東京の大学教授の家庭で高校一年生の男子が祖母を殺害して自殺をした事件があった。原因は祖母の愛情過多が少年の行動を過度に干渉して被害妄想を起こさせたのであった。
 勉強していると夜食を無理に押しつける。夜中に入ってきて布団を掛け直す。留守中に部屋の中を調べて粗捜(あらさが)しをする。冬には厚着をせよとうるさく言う。風邪薬の飲み残しを数まで勘定して文句を言う。好きな推理小説を読んでいると、くどくどとけなす。
 いわゆる老婆心(ろうばしん)で細かい所まで気を使われ、がんじがらめに縛りつけられたような息苦しさに堪えきれず、
 「このままでは大学の学部も、就職も、結婚も、婆さんに決められてしまう。僕の妻も婆さんにいじめられるだろう」と被害妄想にとりつかれてしまった結果の凶行でした。

    家庭内暴力の悲劇

 家庭内暴力という言葉が生まれたのは昭和四十二年の秋頃からです。経済高度成長の時です。金銭的に豊かになることが人生の幸福という通念がはびこって、そのために子供たちは過度の勉強を強要されたのです。
 昭和五十二年に父親が高校生の一人息子を殺す事件がありました。頭のいい子で小学校ではいつも一番の成績で、週に二回の家庭教師、日曜ごとの進学塾通い。子供らしい遊びも趣味もスポーツも何もなく、ただ勉強勉強それが高校に入ってから成績がさがり、大きなショックを受けた。失望と劣等感にさいなまれた。
 「今まで何のために苦労してきたのか」すべては水の泡。心のゼンマイがプツンと切れた。
 学校ではおとなしいが、家に帰ると乱暴するようになった。家の中に入ると大声をあげて泣き叫び、手当たりしだい物を放り投げ、母や祖母を殴り蹴飛ばした。寝ていると布団をはぎ取って、頭から水をかける。部屋中に水をぶちまける。止めようとする父親に灰皿を投げつけ包丁を突きつける。こんな状態が毎日つづいた。
 思い余った父親はついに息子を絞殺した。その晩睡眠薬を飲んで寝る前に少年は「おれの青春をかえせ」と泣き叫んだ。そして殺された。両親は自殺を決意したが果たせず自首した。夫の裁判中、妻は首を吊って死んだ。
 自殺とか他殺とかは異例の出来事で、精神異常とか先祖からの悪因縁とか、色々な因果関係が考えられますが、人の心の中にその種子(しゅし)がないとは言えません。仏教で言う地獄心、餓鬼(がき)心、畜生(ちくしょう)心、修羅(しゅら)心はそれです。この四悪道の心が自己にも内在するという宗教的反省を忘れてはなりません。

 抑制する力を育てない

 ○自我中心が強くて、人に迷惑をかけても平気でいる
 ○虚栄心が強くて、嘘を平気で言う
 ○自己反省をしないで、気にいらないとすぐ怒る
 ○威張りたがる
 ○何事も素直に受け入れないで、悪く受け止める
 
 子供の性格の中にこういう傾向が見られるときは、親は自己反省を込めて心の教育を考えるべきです。心の調整力のないものは衝動性にかられやすい。自分の欲望が満たされない時、相手に敵意を感じた時、とんでもない行動に走ることがあります。
 十数年前、北海道で中学三年の女子が学校内でクラスの友人を刺殺した事件がありました。自分のグループの友達を取ったとか取らぬとか言い争っているうちの出来事です。加害者は返り血のついたセーラー服を体操着に代えて次の授業をうけていました。尋問をうけて始めて自供したのです。精神の未熟さ、調整力の不足がはっきりしています。被害者の父親は四年前に事故死をしています。
 カッと腹を立てて相手を傷つけようとする悪念の炎に対して、そんな過ちを犯してはいけないと、これを消し止める力を育てておかねばなりません。人間は、この悪への抑止力を持っているから人間なのです。
 欲しいと思えば人の物にも手を出す。ままならぬと怒り狂う。貪欲(とんよく)と瞋恚(しんい)の炎が自らを不幸に陥没させます。

火の車造る大工はなけれども己が造りて己が乗りゆく

 不幸も幸福も、結局は自分が造っていくものです。その幸福を造っていく道を説いたのが仏法です。
 『親の因果が子に報い』などと申します。親が善根功徳(ぜんこんくどく)を積んでおけば、子に必ず良い影響が現れます。
 親の正しい信仰は、子の幸運を呼ぶものです。我が子の幸福を考える親は、子の有徳の人格形成のために努められることを切望してやみません。

                              合掌

宝塔第288号(平成16年1月1日発行)