「宝塔」第265号
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 人生はめぐり合いである

 幸運とは、 よき人にめぐり合うことである。
 悪(あ)しき人にめぐり合えば、 苦しみに悩む。
 心すなおに、 愛と信を持つ人は、よき縁にめぐり合う。
 この因縁を大切にする人は、 仏に護られる。

 争って互いに傷つく

 自分の自由だけを主張して、 他の自由を侵(おか)す。
 自分の権利だけを主張して、 他の権利を侵す。

 年々、 こんな考え方が強くなって、 不和や争いが増えているのではないでしょうか。 人間は、 獣(けもの)が争いあって互いに傷つくような愚かさから離れたいものです。
 あるお母さんが心配そうに相談されました。      

 「突然、 娘が嫁ぎ先から帰ってきて、 どうしても離婚するといってきかないのです。 赤ちゃんもいることだし何とか無事に治(おさ)まるようにと願っているのですが・・・」 

 事情を伺いますと、この娘さんは2年前に恋愛結婚をしました。主人には母親がいましたが、最初の約束で別居しています。
 主人は、 口数の少ないおとなしい人柄で、 彼女は娘時代そのままに自由で気儘(きまま)な生活が出来ました。 一人娘だったので、 両親から甘やかされて育ったのです。 そして赤ちゃんも生まれて、 幸福な日々だったのです。
 それが、 ある晩はじめて夫婦喧嘩がおきました。 夕食の時、 主人が 「おかずが不味(まず)い」 と、 文句を言ったのです。 今までに無かったことです。
 彼女は負けていません 「私だって一生懸命つくったのよ。 これで文句を言われたら、 やりきれないわ」 と、 まくしたてました。 そして、

 「あんたは、 おかあさんの料理は美味しかったと言うけれど、 あんなの少しも美味しいことはないわよ」 

 と言い返したとたんに、 主人の平手打ちが飛んできたのです。 彼女は、 さっと顔から血のひいたことだけ覚えています。 気の付いた時には、 赤ちゃんを連れて実家に帰っていたのです。

  思いやりを知らぬ心の貧しさ

 このごろの若い人の欠点は、 他への思いやりのないこと、 堪(た)えることを知らないことであると言われます。
 マイホーム主義とか、 家庭エゴイズムという家庭環境の中で、 子供が過保護に育てられ、 何でも自己本位にしか物を考えられない甘えっ子が増えています。
 何でも思う通りになると錯覚して、 思う通りにならないと、 他の責任にして駄々をこねるという困った性分です。この娘さんもその一人で、 戻って来たとき父親から、「それくらいのことで何だ。 すぐ戻れ」 と言われてもガンとして言うことを聞かないのです。 
 主人が温和な口数の少ない人ですと、 とかく妻はわがままを通して、 自分でも、 それに気づかなくなっています。
 主人の母親が一人淋しく暮らしているのに、 自分たちは別居して楽しく暮らしている。 それが当然だと思っています。 老後の淋しい母親の心を思いやることが出来ないのです。 
 主人は、 自分の母を一人暮らしさせていることに、どれほど大きな心の負担を感じていることでしょう。母は最初から別居しています。 それは息子の為を思うからです。そういう母の心に甘えている自分を情けないと、 心の中では思っていることでしょう。

  「妻さえその気になれば、 いっしょに暮らせる、 母を喜ばせることが出来る」 

 喋(しゃべ)ることの不得手(ふえて)な主人は、 多弁な妻を説得することが出来ません。 心なき妻に対して 「この気持ちの分かってもらえない悔しさ」 が心の底に波うっているのです。
 妻から母の悪口を言われた時、 傷口をかきむしられたような怒りにかられて、 今まで人を殴ったことのない人でしたが、 おもわず手を振り上げたのです。      

求めるところに不満あり

 私は、 その娘さんにあって、 自分の愚かな感情から互いに傷つけあうことのないよう、 冷静になって考えるように話しました。 彼女は、

  「私、 殴られたのは生まれて初めてです。 あんなに腹の立ったことはありません。 夫は私に愛情なんか持っていないのです。 私を憎んでいるのです」

  「そうですか。 あなたは、 愛情を他から求めることしか知りませんね。 それでは、 どこまで行っても満足はありません。 菊の種子を蒔かずに、 菊の花が咲かないと怒っているようなものです。
 愛情とは、 与えるものです。 自分の身も心も与えて尽くしていくのが愛情です。 夫の心や、 夫の母の心を思いやることが出来なくて、 どうして愛される資格があるでしょう。 喜びや悲しみ、 楽しみや苦しみ、 それを共に分かちあって生きていくのが夫婦でしょう。 ご主人も手をあげたことを後悔しているでしょう。 あなたも自分の心の貧しかったことをよく反省して、 幸せを取り戻して下さい」

 しかし、 彼女の心は、 まだスッキリしないようです。

妙法の力

 私は、 彼女のおかあさんに話しました。      

  「失礼ですけれど、 あなたはかって一度は離婚しようと思って実家へ帰ったことがありますね」       

  「はい、 実は主人は良い人で私を大事にしてくれましたが、 お姑さんが大変きびしい人で、 何かにつけて叱責(しっせき)されました。 悲しいやら、 悔しいやらで、 とてもこの家ではつとまりそうもないので、 離婚しようと思って実家へ帰ったことがありました。 父や母からいろいろ意見されて、 昔は今と違いますから、 私も考え直して嫁ぎ先へ戻りました」

  「そういう因縁が今、 娘さんの身の上に現れているのですから、 どうか、 仏様の前で一心に、 自分が嫁いだとき、 厳しい姑を嫌い離婚しようとして親に心配かけたことや悪い因縁をつくったことを親と娘の魂に懺悔をして拝んで下さい」

 妙法の力ほど有り難いものはありません。 翌夕方に婿さんが来て、 頭を下げて謝りました。 あれほどわがままだった娘さんの心も改まって 「私が悪かった」 と頭を下げ、 婿さんと一緒に帰っていきました。
 さまざまの迷いや、 行き詰まりが、 私どもの人生には起きてきますが、 仏の妙法は、 必ず正しい解決と幸福への道を開いてくれます。
 夫婦になるということは、 互いに愛し合い、 助け合うという因縁をつくることです。 悪縁の夫婦でも、 妙法の信仰をされますと、 良縁に変わることができます。

 ある奥さんのご主人が浮気をしました。 それがもとで取っ組み合いの喧嘩をしたあげく、 「別れる」、 「出て行け」 と決裂して、 奥さんは実家へ帰ってしまったのです。この夫婦は、 前世で友達だったのですが、 喧嘩をして仲の悪くなったことがあります。 この因縁をお話して、 奥さんに妙法の信仰をして頂きました。
 一週間目に円満解決して、 その後は仲良く暮らしております。
 家庭の中心は主婦です。 幸福な家庭も、 不幸な家庭も主婦の心掛けによって大きく左右されます。 かと言って夫は関係ない訳ではありません。           

 夫・妻・子供それぞれが互いに対する豊かな愛情をもって和を重んずること。 それ以上に、 正しい仏の教えを信仰して、 悪縁に邪魔されることのないよう、 常に、 諸天善神(しょてんぜんじん)の御守護を受けて、 幸福な人生を得られますことを祈念するものであります。

合掌

宝塔第265号(平成14年2月1日発行)