朱に交われば赤くなる。きれいな水の中に墨を入れると黒くなるように、触れる縁は大切であります。 勝負事の好きな人は、勝負事の好きな人と交わり、釣りの好きな人は、釣り仲間が出来ます。
愚痴多き人に交わっていますと、いつの間にか愚痴を言う性格になり、何事も喜んでいると知らず知らずに喜ぶ人生に変わって行きます。
以前の事ですが、夏の夕方同級生のMさんが、突然訪ねて来られ、私の顔を見るなり男泣きに泣かれ、びっくりしました。御宝前に上がっていただき事情を聞きますと、
「母と妻と子供二人の五人暮らしだけれど、気の強い母と妻が気が合わず、絶えず争っており、子供を連れて実家に帰って、迎えに行っても帰りません。母からは責められるし、仕事も無く、行き詰まって生きる希望が無くなってしまった。電車に乗って金山駅で降り、死に場所を求めながら、電車路を南に歩いて来て俺の死に場所はここだと、電車が来たら飛び込もう、下り電車が来るそこに人が来た、次の電車にしようと待っていた、何気なく前方を見ると、大乗教の本堂が見えて思い出した。
数年前悩んでいた時、君がいる大乗教の本部に訪ねて世話になった事があった。君は今どこにいるのだろう、会いたい、死ぬのは君に会ってからでよいと、本部に行って君の居場所を聞いて、突然伺いました」
「M君よく訪ねて来てくれた、君が自殺をしようとした場所は、自殺と事故死の多い場所だったんだ、大乗教の仏様に助けていただけて、本当によかったね、ところで
おふくろさんはここに来た事を知っているかね」
知らせずに来たと言うので、M君の家に電話すると、弟さんが出られて、「兄が無事で良かった、死ぬ気で家を出たと母から知らされ、兄弟で手分けをして探し廻ったけれど、行方不明で心配していました。本当にありがとうございます」と喜ばれました。
夜のご法座に一緒に出掛け、帰ってM君の背中に手を当てて一心に拝み、休んでいただいた。夜中に起きて伺うと、ぐっすり休んでいて安心をしました。
朝の食事をすませ、御宝前でM君を北枕で寝かせ、着物を逆さに乗せて、枕元に灯明と線香をつけて、衣をつけて、「M君自殺をしていたら、親族友人等が集まって通夜と葬儀です。死んだつもりでお経を聞いてくれるように」と頼み真心をこめて、お通夜のおまいりと回向文を読み上げたのです。拝み終わって感想を聞くと、「何だか変な気分だよ」と言いました。
「M君今までの君は死んで、今日から新しく出直すのだよ、生きていて良かったと、必ず喜べるようになるから家に帰ったら母親に、心配をかけたお詫びをして、これから強い意志をもって、女房子供を幸せにすると、心に誓って迎えに行けば帰ってくれる。明るい心で暖かい心で努力しよう。仏様を念じ妙法を唱えれば就職も出来るよ。悩んだり困ったらいつでも相談してくれ、辛い事もあるけれど、喜びのあるのも人生だから、今日のお通夜のお経を忘れずに、これからがんばろう」と励まして、駅まで送り帰っていただいた。
数年前一度私を訪ねて、総本山に来てくれた友人でしたが、仏様、教祖様に見守っていただいて、自殺寸前にお導きいただけたと、心より喜び感謝申し上げました。
M君は心を入れ替え、家に帰って母親に詫び、妻子を迎えに行くと、素直に帰られ平和な日々が続きました。
数年後クラス会でM君に会いますと、明るい顔で活き活きしておられ、M君は「H市の公務員に採用され、元気で頑張っています。おふくろも他界し、子供も成長して先日娘が嫁ぎました。花嫁衣装を来た娘の幸福な門出に出席出来、生きていて良かったと心から喜べました。二カ月程前公務で船に乗って、H市よりK市の港に着く手前の防波堤の所で、大勢の人が集まって私の方に手を振るので、近づいて見ると、釣りに来た人が自動車共に海に突っ込んで大騒ぎとなり、細いロープを投げて助けようとしても、全身ずぶ濡れで上にあがれず、困っている所に船を横付けにして、溺れている人を救う事が出来、人命救助の表彰も受けました。人を助け救う事は喜ばしいことだね、お役に立てて有り難かったですよ」と喜んでくれました。
M君は皆の前で、七福神の万歳を披露し、カラオケも力強く歌い、活き活きとしている姿を見て喜べました。
M君は「こんな素晴らしい人生を送れるのも君のお陰です」と喜んでくれました。
かつて総本山の仏様・教祖様にお参りをした功徳で仏様・教祖様の御守護を受けられたのです。 |